糞の山の上ホテル

人生に絶望したコミュ障クズが、糞の山を築き上げるブログ

ダンジョン飯と、最近のファンタジー漫画に思うこと

気付いたらダンジョン飯が完結していて、Kindleで半額セールがやっていたので読んでみた。やはり九井諒子先生の実力は本物だなぁ。一方で、最近のファンタジー漫画に対して違和感を感じざるを得ない部分があるので、考えたことを記事にしておく。(好きな作品を持ち上げるために、他の作品を下げるのはあまり良くないと思うが…)

最近、巷で売れている作品というと「鬼滅の刃」や「葬送のフリーレン」などが代表的だろうか。(鬼滅の刃は数年前?に完結したから最近でもないが)どちらも売れに売れている超有名な作品だけど、正直私はどちらの作品も苦手だ。なぜかというと、時折差し込まれるコメディタッチのやり取りが、どうにも世界観とそぐわないからだ。一歩間違えれば、四肢が吹っ飛ぶような状況において、なぜボケ突っ込みのようなやり取りが発生するのだろうか、と常々疑問に思うのだ。自分は絶対に死なないという確証でもない限り、こんな緊張感のないやり取りはあり得ない。アフガニスタンイラク戦争などの紛争地域で従事する米軍兵が軽口を叩きあう場面なんかは見たことはあるが、まぁ軽口程度だし、一定の緊張感は保っている。また、ファンタジー漫画での状況というと、どちらかというと、四方八方からゲリラ攻撃が仕掛けられ、圧倒的な不利な状況、つまりベトナム戦争時に密林の中で進軍するような状況なのかなと。そんな現場にいて、果たしてこんな腐女子の想像する男子校生徒たちのやり取りのようなものが成立するのだろうか、もっと殺伐としているべきなんではないだろうか、とどうしても思ってしまう。

筆者は、ファンタジー作品が好きな方なのだが、そこに出てくる人間たちの感情や考え方はなるべく現実に沿ったものでないと、感情移入もできないし理解できないため、嫌だ。どうしても、操り人形劇を見ているような気持になってしまう。葬送のフリーレンでは、ダンジョン内で主人公のフリーレンがミミックに挟まれて「くらいよー」とか言ってる場面が時折挟まれるのだが…なんだろう…気持ちが悪いのである。ダンジョンの中ってそんなに緊張感がないものなのだろうか?また、勇者ヒンメルの「あの冒険は楽しかった」という発言もあり得ない。はっきり言うが、生きるか死ぬかの状況を振り返って「楽しかった」なんてなるわけないし、ベトナム戦争から帰還した米兵のようにPTSDになるのがオチ。そうでないなら、ヒンメルは魔族や魔物を切り刻むことで快感を覚えていたサイコパス野郎か、あるいは、自分は絶対に死なないという謎の確信があったのだろう。(後者はもしかしたらあり得るかもしれない。結局のところはすべて女神(=作者)の筋書きでしかない、とか。だとしてもフェルンなど、他キャラの態度に説明がつかない。)

その点で見ると、ダンジョン飯においては舞台設定を用いて、生死が絡む世界観とコメディタッチの作風のギャップを解消している。作品のかなり最初の段階で、「ダンジョンでは人は死んでも蘇生できる」という事が明かされる。これは、RPGゲームの設定を踏襲しているのと同時に、ダンジョンというのが一体何なのかということ設定の根幹を成す部分で、かなり重要な点にもなっている。従って、ダンジョン内では生死というのが非常にカジュアルに扱われ、魔物のような危険な存在が跋扈する迷宮に挑む冒険者たちはさながらバイト感覚で迷宮に潜るのである。それにより、主人公たちのコメディタッチのやり取りも、バイト中の軽いやり取りのように見え、筋が通るのだ。仮に死んでも蘇生すればいい、と。実際これは異常な状況であり、作品内でも人が生き返るということが尋常ではなく、冒険者たちは感覚が麻痺している、という点にナマリというキャラが他冒険者(=読者)に釘を刺している場面が出てくる。

舞台設定にうまく「蘇生」という要素を付与し、それによりピクニックのようなゆる~い旅程のように主人公たちの冒険譚を描くのは、昨今のカジュアルな雰囲気の作品を好む読者層にマッチしていると同時に、登場人物たちの行動原理・原則に破綻が無いよう配慮しているように、私は受け止めた。単純に絵が非常に丁寧でキレイで可愛いだけでない。だから、私はダンジョン飯が凄く好きなのだ。

そんなダンジョン飯も昨年で完結してしまった。途中でダレたりもしたが、きっちりと完結したので、フォローしていて良かったと思う。ハンターハンターベルセルクなど、未完で終わりそうな作品が目に付く中で、本当に素晴らしいと感じた。九井諒子先生が次にどんな漫画を描くのか、とにかく楽しみで仕方ない。

と同時に、最近のコメディータッチのファンタジー漫画がどうにかならないものかなとも思う。あ、あとゲームの世界に転生するなろう系作品と、それに対するアンチテーゼとしての「この世界は不完全すぎる」という漫画についても同じことがいえるから、こちらについても記事を書きたいなぁ。。。